ch12: ★lowest common denominator
508ページ
A stream socket's notion of out-of-band data has been defined as the lowest reasonable common denominator.ストリームソケットが採用している帯域外データの概念は、様々な概念の最大公約数である。
前の時も悩んだんだけど、lowest (least) common denominator に対応する日本語は「最小公分母」である。しかし、文章の中では「最小公倍数」と言った方が語感がいい。でも、意味から考えれば「最大公約数」か。
というか、最小公分母ってなんのことかわからないんじゃないだろうか。そもそも言葉の語呂だけで使っていて、みんなあんまり真剣に意味を考えてないんじゃないのか。英語で最小公倍数は least common multiple だが、multiple よりも denominator の方がなんとなくインテリな感じがする。日本語で「最小公分母」というと、どうもこの「ぶんぼ」の部分が野暮ったい。最大公約数は greatest common devisor らしいが、これだと控えめさにかける感じがある。
考えてみると、「1/最小公分母」は、通分しようとする分数の最大公約数になっているわけだから、最大公約数が案外素直な訳なのかも。しかし、分数の最大公約数って言うかな?
共通部分とかにしてもいいのかもしれないけど、それだとなんとなく原文のもつ印象を損なう気がするのだ。
最小公分母という言葉は一般的な言葉ではないので適切ではないと思います。私は学校で習った覚えがありませんし。
tfd.comのlowest common denominatorの説明は以下のようになっています。
> the most basic, least sophisticated level of taste, sensibility, or opinion among a group of people.
否定的な語感があるようですね。
こういう意味からすると最小公倍数でも最大公約数でも訳語としてあまり適当ではないように思えます。上記のような意味から文脈に即して訳すのでしょうね。文脈が分かればもうちょっと考えることができますが。
投稿: himazu | 2005-08-15 22:44
原文を引用しておきましたが、あまり役には立たないでしょう。「最大公約数の意見」とか言うけど、だいたいそれと同じ意味だと思います。
この表現は数学的におかしいんじゃないかという印象を持っていたのですが、要素を合成するのに乗算を使うと考えれば合理的だということに気がつきました。つまり、それぞれを素因数分解したものの中で最大の共通集合が最大公約数になるわけです。無意識に足し算を想像するから違和感があったのでしょう。
というわけで最大公約数でいいんじゃないかという気はしているのですが、問題は単なる誤訳じゃないかと思われるのが心外だということです。
投稿: utashiro | 2005-08-16 12:28
「ファイアウォール構築」では、こんな風に訳してました。
In this situation, you don't want to hold back all connections to the lowest common denominator, so you need to support negotiation.
条件を満たす最低限の選択をすべての接続に適用するのは望ましくないので、調停 (ネゴシエーション) の処理が必要となる。
言葉の本来の意味から言えば、最低限じゃなくて最大限だと考えることもできます。でも、今津さんの言うように否定的な意味合いが含まれているので、訳文としては悪くないと思います。でも、よく読むとあんまり論理的な文章じゃないですね :-)。
結局、雰囲気だけなんじゃないかと感じるのはそんなところです。でも困ったことに、アメリカ人はどうもこの言葉が好きみたいなんですよね。
投稿: utashiro | 2005-08-16 12:52
もう一箇所ありました。
If you are going to need to install multiple firewalls in different countries, you may need to use the lowest common denominator or develop an exception policy and strategy to deal with the situation.
異なる国々に複数のファイアウォールを設置する必要がありそうな時には、最小公分母的選択をするか、状況に対処するために例外的ポリシーや戦略を考え出す必要がある。
こっちは、「的」で逃げてます :-p。
この時は、文脈から大体意味はわかるだろうから、アメリカ人はこういう言い方をするんだっくらいに感じてもらえればいいと思ったのかもしれません。
投稿: utashiro | 2005-08-16 13:10
|In this situation, you don't want to hold back all connections to
|the lowest common denominator, so you need to support negotiation.
|条件を満たす最低限の選択をすべての接続に適用するのは望ましくないので、
|調停 (ネゴシエーション) の処理が必要となる。
この訳は、だいぶ意味が変わっているような気がします。
|このような状況では、すべての接続がこうであるはず、というような仮定が
|できないので、調停 (ネゴシエーション) をサポートする必要がある。
the lowest common denominator は、数学の術語の他に、一般的な語として
「ある条件を考えた時の多数派」という意味があります (たとえば、
Longman には Television quiz shows often seem to target the lowest
common denominator. という例文が載っています)。
ちょっと一語で対応する日本語がないのですが、
あまり肯定的な響きはありません。ちょうど lcd という単語をネタに書かれた
記事が
http://ezine.daemonnews.org/200410/lcd.html
にありますので、ニュアンスを理解するのに参考にされてはいかがでしょうか。
この Building Internet Firewalls の一節は、その前の文にある「すべての
接続がいつも完璧な暗号アルゴリズムを使うはずだ(=一種の多数派)」という
ひとつの思い込みのことを指しています。
p.508 の文章は、「現実的なケースにおいて最も広く対応できるように
定義してある」とか、そういう意味です (ただしその背後に、「完璧ではない」とか
「無駄がある」とか、否定的なニュアンスが込められています)。
最大公約数とか、最小公分母という表現を使うのが悪いとは思わないのですが、
個人的には、どちらも意味がわかりにくくなるだけだと思います。
投稿: hrs | 2005-08-18 04:54
|このような状況では、すべての接続がこうであるはず、というような仮定が
|できないので、調停 (ネゴシエーション) をサポートする必要がある。
と訳すべきだということでしょうか。そのような訳があり得ないとは言いませんが、僕の趣味ではありません。今の訳が若干正確さを欠いていることは確かですが、普通に読み流すと気にならない範囲だと思います。なので、書き流してしまいました。
> p.508 の文章は、「現実的なケースにおいて最も広く対応できるように定義してある」とか、そういう意味です
そのように読んでいます。この解釈が
最大公約数 (2)多くの事柄が、少しずつ食い違いはあるがそれらのすべてに共通してあてはまる部分。「異論はあろうが、議長の見解が―を示すものだ」(大辞林 第二版)
と矛盾しなければ、今のままでいいんじゃないかと判断します。「すべてに共通」あたりを文字通りに解釈すると厳密さに欠けるかもしれませんが、その辺は大目に見るとして。
投稿: utashiro | 2005-08-19 14:15